公開日:2023/11/25
カテゴリー:相続不動産のお悩み解決コラム, 相続不動産の売却, 相続不動産の手続き
私どもへは、相続した不動産の売却の相談が日々多く寄せられます。その際に「“相続不動産の売却”と“一般的な売却”どう違うのですか?」と疑問を持たれるお客様も居られます。
相続不動産の売却には知らないと損をしてしまうポイントがいくつかありますので、こちらを解説していきたいと思います。
1.不動産の名義変更をしてから売却をする
「親の不動産なら、子どもはそのまま売却できるんじゃないか。」と思っている方が多く居られます。
ですが、親子であっても、両親の名義のままでは売却することはできません。
『名義変更』をして、子ども世帯などに名義を変えて、『登記』をしてから売却をすることが必要になります。
まずは、しっかりと相続の手続きをしましょう。
2.相場を知ること
その相続不動産が元々住んでいた実家でも、実家を出て結婚をしたり、一人暮らしをして、実家から離れて暮らしてる方が多いのではと思います。
そういった子ども世帯が相続をした時に、今の実家の相場がいくらの価値があるのかと言うことを把握せずに売却してしまう人がとても多いです。
また、相場を知るために不動産業者の売却査定を利用される方もいらっしゃると思います。
ここで大事になってくるのは不動産会社からの査定は目安として利用をしてもいいのですが、鵜呑みにしないということです。
売却査定は、「売れる価格」ではないことがあります。
売れるだろう・・と言う予想の価格であったり、不動産会社が『媒介契約』を取るための金額であったりするのです。
そのため、相場より高い金額で査定をされるということが起こり、その価格を信じて売却をスタートすると相場より高いケースのために、なかなか売れないということになってしまいます。
買う方がどれくらいの価格だったら買いたいか、ということを注意する必要があるので、ある程度は相場を調べて、不動産会社の査定を鵜呑みにして売却をしないように気をつけましょう。
3.売却の売り方を考える
相続不動産のは、家屋が老朽化してるケースが多くあります。
すると、不動産会社から「解体して更地にしてから売りましょう。そうでないとなかなか売れないですよ。」という提案されることがあります。
ですが、相続不動産の売却において、本当に解体して更地にした方がいいケースと、老朽化しているけれど家屋が残ったまま売却した方がいいケース、両方があります。
ところが、不動産会社によっては、お客様のメリットよりも自分たちの売りやすさを優先する会社もあるのです。
やはり老朽化した建物があるよりも更地にしてきれいな状態のほうが売りやすいということでこのような提案をしてくる会社もあるのですが、本当に解体してから売ったほうがいいのか、古屋付きのまま売ったほうがいいのかはお客様の状況それぞれによって違ってきます。
そのため、いくつかの不動産会社の考え方を聞いた上で最終的な判断をすることをお勧めします。
4.売り先を考える
不動産会社に売却を依頼した時に、恐らく2つの提案をされると思います。
一つは、一般のお客様への売却です。これは一番スタンダードなやり方です。
もう一つは、不動産会社に買い取ってもらうやり方です。
それぞれメリット・デメリットがあるのですが、相続不動産の時は、こだわりなく「早く処分できた方がいい。」ということで不動産会社に買い取りをお願いするケースもよく見られます。
業者買い取りの最大のメリットは早く『現金化』出来て手離れがいいことです。
また、古屋付きの建物の時は『契約不適合責任』が免責になります。
いわゆる『瑕疵担保責任』が、業者に売却する場合は免責されるというメリットがあります。
そして、業者買取の場合のデメリットは、一般のお客様への売却と比べて2割から3割は安くなってしまうという点があります。
それに対して、一般のお客様への売却をする際のメリットは、高い金額で売れやすいということです。
また、デメリットは、先ほどの『瑕疵担保責任』が発生する点です。
建物を引渡しをした後に何か不具合が見つかった場合に(例:雨漏り・傾き・故障など)一定期間売主が保証しなければいけないということになります。
このそれそれぞのメリットとデメリットを理解した上で、どちらの売り方が最適なのかを検討してみましょう。
一方的に不動産業者から「うちがすぐに買い取ってあげますよ。」という話に乗ってしまうと、売却価格で損をしてしまう場合もあります。
2割3割安くなったとしても、早く現金化できる面や、契約不適合責任がなくて免責されるから手離れがいい点にメリットが感じられる方は、業者買い取りが良いのではと思います。
5.囲い込みに注意する
『囲い込み』とは、仲介を依頼した不動産会社が、お客様の情報を他の不動産会社や市場にださないやり方です。
不動産を売りたいというお客様が不動産会社に売却を依頼した時に、その不動産会社は「レインズ」という物件を登録するサイトに登録する原則があります。
悪質な業者は、このサイトへの登録をしないのです。
登録をしないと、多くの不動産会社に見てもらう機会を損なうため売却が進みにくくなります。
また、そのレインズにへ登録するけれども、他の不動産会社から「この物件案内できますか」「販売中ですか」と問い合わせがきた時に情報を出さない業者もあります。
物件への問い合わせがあっても、「その物件は午前中に申し込みが入ってしまいました。」や、「オーナーさんが体調を崩して今内見ができないんです。」などと、いろいろな理由をつけて内見や案内を断られてしまうのです。
これが実は嘘の場合も多いのですが、このやり取りは売主さん自身では知る由がありません。
このような方法を『囲い込み』と言います。
ひとつの不動産会社が、不動産の仲介手数料を売主と買主の両方からもらう『両手取引』をしたいために、他社に情報を出さないという事です。
これは、大手の不動産会社でも意図的にやる業者が一定数いるので注意が必要です。
6.時間的な余裕をみる
不動産を相続したけれど、自分も自宅があって、兄弟も自宅を持っているので誰も住まない場合も多くあります。
そのような場合、「ある程度の金額だったら、いくらで売れてもいいので早く売りたいです。兄弟で現金で分けて、相続の手続きを全部終わりにしたいです。」というお客様も居られます。
そうなると、ここまでの1〜5までのポイントを熟考する間も無く不動産会社に相談してしまうので、「急いでいるんだったらうちが買い取ってあげますよ。」と親切のように言ってくる業者に会ってしまって、「これを更地にしないと早く売れませんよ。」と無理に建物を解体をさせて更地にして売られてしまったりなど、お客様にとって不利益な売却に進んでしまう危険があります。
そのような事にならないために、不動産業者には、「そんなにうちは急いでいません。適正な価格で適正な期間で売れればいいです。」というようなスタンスを、是非見せて欲しいと思います。
7.小規模宅地等の特例を使った不動産は一定期間売却をしてはいけない。
小規模宅地等の特例というのは、相続不動産を扱う上ではとても重要な制度になります。
小規模宅地等の特例は、
・配偶者の方が同居していた家族
・同居していた子ども
・同居はしていないが持ち家を持っていない子ども
このような方が使える可能性のある制度です。
配偶者は自宅を相続した時はいつ売っても問題になりませんが、同居していた子ども、あるいは同居していなくて持ち家を持っていなかった子どもがこの相続不動産を売却する時は、相続の申告期限までは居住や所有をしていなければいけないというルールがあります。
小規模宅地の特例は不動産の評価額が8割も減額されるので、例えば1億のご自宅の場合、この小規模宅地の特例を使うと2,000万の評価額で済むという画期的な制度です。
この制度を利用できれば、相続税に大きな影響が出てきます。
ですが、制度を利用する際は、先ほどお話したように「相続の申告期限まで保有していなければいけない」というルールを守らないとこの制度が使えなくなります。
不動産業者によっては、この特例について熟知していなかったり、または自社の利益優先で早く売却をさせようとしてくる場合もあります。
不動産会社が「今すぐ買いたい人がいますよ。」「今売却するといくらで売れますよ。」と言ってきても惑わされずに、特例の利用についてきちんと理解しておく必要があります。
ルールを守らない場合、本来かからないはずの相続税が発生したり、延滞税とか重加算税などのペナルティを課せられてしまうこともあるため、注意が必要です。
配偶者以外の方が相続したときには、相続の申告期限まで『居住』『所有』をすることを必ず守りましょう。
特例の利用については不動産業者任せにせず、専門の税理士へご相談ください。
我々は税理士事務所も併設している不動産会社ですので、もし私共の取り組みにご興味のある方は、ご相談お待ちしております。
→相続不動産のお悩み解決チャンネル「【失敗しない不動産売却】やってはいけないこと7選を専門家が解説!」
松本 直之
宅地建物取引士・FP・賃貸経営管理士・シニアライフカウンセラー。
積水ハウス株式会社に25年間勤務。退職後、2020年6月に株式会社スリーウェイズを設立。また、一般社団法人相続終活サポート協会の理事として高齢者の終活も支援している。